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2008/08/13 水曜日 17:45:44 JST |
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来年1月住基ネット参加で区民を裏切る山田区長
杉並区は8月1日付の広報『すぎなみ』で、突然「7月8日の最高裁の上告棄却に踏まえて、住基ネットへの参加準備を始めることにしました」と表明しました。住基ネット訴訟の敗訴が決まり、記者会見で住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)への参加を発表した後のすばやい動きです。これは「区民のプライバシー保護」の区長公約を破り、山田区長の「住基ネット反対」の姿勢を評価してきた多くの区民を裏切るものです。
広報で2面にわたって掲載された「参加の言い訳」は、区長の「住基ネット反対」が、区民の人気を得るためのパフォーマンスであったことを物語るものでした。「言い訳」の中には、7つの偽りがあります。無所属区民派は、9月の第3回定例会・決算特別委員会で、区長の責任を追及します。1月参加をストップさせるために皆さんの力を寄せてください。
山田区長の住基ネット参加理由に7つの疑問
(1)「最高裁の決定を受けて住基ネット参加」?
区長は、「広報すぎなみ」の「区長からのいいメール」で「司法の最終判断が下った以上、行政官としては当然判決には従っていかねばならない」と述べ、最高裁判決を住基ネット参加の理由にしています。しかしこれは根拠のない言い訳です。そもそも、この裁判は、杉並区の側から「段階的参加方式」による住基ネットへの参加を求めて、国と都を相手におこしたものであり、国や都から杉並区が参加していないことを違法として訴えられたわけではありません。判決も、「全員参加が法の前提であり、段階的参加は違法」というものであって、なんら接続の法的義務があらたに課せられたわけではありません。結論的に言えば、段階的参加はできないということだけです。
区長は、かつては、「住基ネット自体がプライバシー権を侵す憲法違反のおそれあり」として、「その万全の保護が法制化されるまでは、接続しないのが行政官の責任」という姿勢をとっていたのです。その後制定された個人情報保護法では、万全の保護とは言えず、事態はまったく変わらないことは、杉並区が裁判でも主張していたことです。「段階的参加を認めないなら、不参加を続けますといって、矢祭町や国立市のように続ければいいことなのです。
(2)「個人情報保護対策を万全にし、住基ネットの参加準備」?
区長は、2003年6月に参加方針へと転換する『住基ネット対応方針』で、個人情報保護関連5法の成立によっても、「憲法上の保護法益である住民のプライバシー保護という観点から見たとき、こうした措置が講じられはしたものの、依然として十分な安全性が確保されたとは言いがたい状況にある。」と述べていました。当時の杉並区の専門家による調査会議では、「個人情報関連5法が成立しても危険は残る、何一つ問題は解決されていない」と指摘されていました。
無所属区民派は、個人情報保護法自体の問題点を指摘してきました。その法律の内容には、第1に、個人情報保護の名のもとに、報道・言論を規制し、権力を握る政治家、官僚、資本家など悪行をあばくことを禁ずることにも利用される危険性があること、第2に、住民の個人情報を行政機関がにぎり、思うままに乱用できるおそれがあること、第3に住基ネットとの一体的運用で、人々のすべての個人情報を管理統制することができる有事体制につながる危険性を指摘してきました。
その証拠に、2003年557市町村が、住民基本台帳法上で閲覧可能な4情報(氏名、住所、生年月日、性別)以外の個人情報を、防衛庁に提供していたことが発覚したのです。提供された情報には、世帯主や本籍のほか、18歳以上の成人の病歴までが含まれ、徴兵制に必要な基礎情報の提供であるとわかりました。一方住基ネットスタート後、全国で個人情報の漏洩事件が次々と明るみに出ていました。
それにもかかわらず山田区長は、住基ネット訴訟の理由として、突然「個人情報保護と利便さはどちらも大切だから、便利さを得たい人に今回は従う」と言い出したのです。利便性を第1にして、個人情報保護を二の次にしたのでは、裁判で勝てるはずがありません。山田区長が今になって「個人情報保護対策が万全に」できると言うのなら、これまでなぜ住基ネットに反対したのか理解できません。
区長は住基ネットの危険性を主張するなら、選択制をとった場合、「利便性を享受したい人たちのプライバシーが、知らないうちに侵害される危険性がる」ことを区民に伝えるのが責任でした。それをしなかったのは、区長の選挙公約である「個人情報の徹底保護」「住基ネットへの慎重姿勢」は、区民のためではなく、選挙で人気を得るためのパフォーマンスだったためでした。
(3)「全国初の『住基プライバシー条例』制定」?
『広報すぎなみ』で、2000年に「区議会において『住基ネットへの危惧』を表明、2001年に「全国初の『住基プライバシー条例』を制定」したと「実績」を自画自賛しています。この条例は2001年9月第3回定例会で緊急に提案されました。委員会審議で複数の反対意見が出されながら、多数決で成立を急いだものです。その年の8月18日に改定住民基本台帳法が施行され、住基ネットが稼働したことへの対応だったのです。
当時新城せつこ(現無所属区民派)は、「山田区長が法律の施行を理由に、これまでの『住基ネット反対』の姿勢を変えて、住基ネットへの参加を前提にして『個人情報保護を目的とした条例改定』を行った」と批判し、議案に反対しました。
当時の区民の思いは、山田区長の「住基ネット稼動を理由とした参加意思」とは全く違っていました。2001年の2月11日「広報すぎなみ」で、住基ネットへの区民意見を募ったところ、4月10日までに339名が意見を寄せ、住基ネット参加への疑問や反対が239名、70・5%に達し、委員会審議でも区民課長がそれを紹介しています。
この条例は2004年2月に改定されました。2005年の条例改定の時には、金沢地裁判決で確認された「自己情報コントロール権」が明記されませんでした。個人情報保護の原点は、個人情報の自己情報コントロール権です。個人の情報がどのように使われたのかわかるシステムにすべきであり、個人情報の利用報告が義務付けられるべきでした。この点が明記されない杉並区の『住基プライバシー条例』は、絵に書いた餅にすぎません。
住民基本台帳の情報を利用するのは7割が商業目的で、他の3割は公的な目的とはいっても、その大半は警察からの問い合わせです。住基ネットにつながれば、公権力によって複数のデータをあわせて照合する(データマッチング)ことが可能になり、人権侵害が見えないところで進められることになるのです。これを防ぐ手立てがなければ、プライバシーは守れません。
(4)「非通知を希望した方の参加は住基ネットの安全性を総合的に確認したとき」?
2003年12月に区長は段階的参加方式へ転換するにあたり、10月から11月にかけて区民に非通知申し出を募りました。その折に「住基ネットの安全性が総合的に確認されるまでの当面の措置として、『非通知の申し出』をうけつける」と説明していました。
これは住民には唐突で、理解できない人も多く、「非通知の申し出」をしなくても、区が不参加だから大丈夫だと思い込んでいる人が多数いました。その結果、住基ネット反対が67%であっても、非通知希望者は17%にとどまりました。
区長が、「通知を希望する人の権利がある」というのであれば、通知を希望した人だけ参加を求めるべきでした。「非通知を希望した人」以外は、「通知希望」とみなすのは筋違いです。高齢者や障がい者など「非通知希望」が困難な人や「山田区長は住基ネットに接続しない」と信じて「非通知」を希望しなかった多くの人々の権利を切り捨てたのです。しかも、現在「総合的に安全が確認された」現実はありません。それにもかかわらず、非通知希望者も含めて、来年1月に住基ネット参加を強行する山田区長はおおウソつきです。
(5)「住民のプライバシーを守るための訴訟」?
杉並区は、「訴訟の意義の第一は、住民のプライバシーを守るために基礎的地方公共団体が採るべき責務と権限を明らかにすることです」と述べていました。しかしことの真実は、住基ネット反対で名を売った区長が、住基ネット参加の幕引きのために裁判に訴えたということなのです。それは裁判の争点を見ればすぐ分かることです。
第1に、「段階的参加を求める」こと自体が、住民基本台帳法に従う要求であるため、住民全体の情報送信を前提とする住民基本台帳法に違反することは争う余地がありません。一見すると、「区民の権利を擁護する裁判」であるかのように思わせる区長のパフォーマンスです。裁判所からさえ、「法的権利の保護救済を目的とする訴訟とは言えない」といわれ、杉並区が住基ネットに早く参加したがっていることを見透かされてしまったのです。裁判所からは、「杉並区が憲法違反を争うなら、自己のプライバシー権を侵害されたと主張する区民が法的救済を求めるべきだ」といわれ、プライバシー権をいうなら、区長が区民とともに争うべきだと忠告される始末です。
第2の争点である「1億円の損害賠償請求」は、わざわざ負けるために付け加えたものとしか思えません。国の立場からいえば、住基ネットを離脱している矢祭町や国立市(当初は杉並区も含め)によって、全面利用に歯止めをかけられ、何兆円もの損害を与えられたのは国や都の側だと言いたいほどでしょう。損害賠償を国や都に要求することは、憲法違反を争うべき裁判の戦略、戦術としては、誤りです。
この裁判は、プライバシー問題をめぐる裁判や先進自治体の動きに水を差しただけで、百害あって一利なしでした。2005年に金沢地裁は、住基ネットを憲法違反とし、原告の情報に関する差し止めを命じました。2006年大阪地裁は、住基ネットは自己情報コントロール権を侵害するものであり、憲法13条違反であると認める判決を下しました。これは、2005年12月の名古屋高裁による金沢地裁判決を取り消す判決を覆すものでした。大阪箕面市の藤沢市長は、大阪高裁判決を受け入れ、箕面市在住の原告の住民票コードの削除を命じた判決を確定させました。全国各地で創意工夫を凝らした努力が進められている時に、山田区長の訴えた裁判とその判決は、これらの努力の足を引っ張る重大な敗北でした。
(6)不参加は「行政上の利便を享受したい区民の利益を損なう」?
「広報すぎなみ」2003年6月1日付けの「区長からのいいメール」では、「住基ネットに400億円かけた『便利さ』があるのか、『便利さ』の差は10年に一度しかない旅券の申請時に、役所で戸籍謄本と住民票の両方を取るか、戸籍謄本だけを取るかの違いなのだ」と書かれていました。裁判の訴状では、「住民票写しの広域交付、転入転出の特例処理、住基カードなどすべてにわたって、住基ネットの利便性は乏しく行政効率化にもならない」と述べています。これらの主張との整合性はどうなったのでしょうか。住基ネットの「目玉」とされた「住基カード」に至っては、多額の税金で補助しながらも、初年度発行予定300万枚の1割にも満たない25万枚しか発行されてないほど無意味なことは、区も承知していることです。
山田区長が「行政上の利便を享受したい区民」などと言いだしたのは、2004年1月からスタートした公的個人認証制度が住基ネットにリンクされたことを契機とするものです。公的個人認証とは、インターネットを通じて行政機関等に電子申請・届出を行う際に、他人による「なりすまし」やデータの改ざんを防ぐために用いられる本人確認の手段です。この制度を利用するためには、住民基本台帳カードの取得が前提とされています。そのため住基ネットに不参加の地方公共団体は、公的個人認証サービスを利用できない不利益があると言われているのです。
しかし、現時点では、公的個人認証制度の利用業務は、国では国税電子申告や社会保険関連申請届など限定的な利用です。都道府県では行政不服審査法に基づく東京都知事に対する異議申し立てなどに限られており、市区町村ではまちまちで、利用可能業務は限られており、23区では千代田区をはじめ7区が使える業務はありません。法人関係での利用(こちらは別に法人認証制度がある)は急速に拡大しているものの、個人で利用はごくわずかです。個人が何年に一回しか利用しない手続きなら、むしろ窓口に行った方が簡単で安心なことがほとんどです。
そもそもこの制度の導入は、住基ネットを定着させるために、無理やり公的個人認証とくっつけようとしたものです。このような「利便性」で犠牲にできるほど、山田区長の考える「プライバシー権」は軽いものだったのでしょうか。
(7)住基ネット参加で「健全なIT社会の実現」?
住基ネットの危険性は、本人の意思とは無関係に背番号コードをつけられ、本人の確認情報6情報を管理されることです。さらには本人確認の目的で、各種の行政事務に外部提供する仕組みに組み込まれていきます。これは憲法13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、(中略)最大の尊重を必要とする」に違反します。
すでに2002年末には、住基ネットとインターネットを使った電子政府構想を実践するための「行政手続きのオンライン化3法」が成立しました。それにより、住民票コードなど本人確認6情報(氏名、住所、生年月日、性別、住民票コードと移転などの変更情報)が、本人の意思にかかわりなく役所の必要に応じて、16000を超える行政事務に提供されることになります。また、ほかの多様な個人情報と照合し、蓄積することができます。こうした個人情報の取り扱いが本人の同意なしに行われることは、個人情報の自己コントロール権の完全な侵害です。区民の個人情報を守る唯一の手段は、住基ネットから離脱することだとあらためてわかりました。
今こそ区長公約の実現を求め、2009年1月住基ネット参加を中止させましょう。住民投票などの権利を行使して、杉並区がどうすべきかを改めて区民に問うべきです。9月定例区議会で追及します。ご支援をお願いいたします。 |